運送業のしごと 手続きと制度を、現場の側から
法令を守る 一次資料で確認 2026-08-02 更新 2026-08-02

改善基準告示に違反すると、車両停止が10日単位で積み上がっていく

準拠した制度: 令和6年4月1日適用(改善基準告示改正) / 貨物自動車運送事業者の法令違反に対する点数制度

要点

  • 拘束時間は「労働時間」だけではありません。休憩・仮眠、荷待ちの時間も含みます
  • 休息期間には分割の特例がありますが、1か月程度を限度に全勤務回数の半分までしか使えません
  • 違反は労働基準監督署と運輸支局の2つの窓口から別々に処分されます
  • 運輸支局側は点数制度です。車両停止10日ごとに1点、累積50点で事業停止、80点で許可取消になります
  • 「知らなかった」は、どちらの窓口でも通りません

拘束時間には、運転していない時間も入ります

改善基準告示の数字だけを見ていると、「運転時間の上限」だと誤解しやすいところです。実際の拘束時間は、始業時刻から終業時刻までの時間で、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む)の合計として定義されています。

ここに荷待ちの時間が入ります。荷主の都合で積み込みや荷下ろしを待たされている時間は、運転していなくても拘束時間としてカウントされます。荷待ちが恒常的に発生している取引先を抱えている事業者ほど、月284時間の枠を運転時間の感覚だけで管理していると、気づかないうちに超過します。

管理する側は、運転日報に「運転時間」だけでなく、待機・荷役の時間まで記録して初めて、実際の拘束時間が見えるようになります。

休息期間は分割できますが、無制限ではありません

休息期間は継続11時間以上が基本で、9時間を下回ってはいけません。ここまでは転職を考えるときの読み方でも触れた数字です。

実務でよく使われるのが、休息期間の分割特例です。当分の間、一定期間(1か月程度を限度)における全勤務回数の2分の1を限度に、休息期間を拘束時間の途中および拘束時間の経過直後に分割して与えてよいことになっています。

長距離輸送で車中泊を挟む運行では、この分割特例を使わないと現実的に運用できないケースが多いです。ただし「限度に」とある以上、月の半分を超える分割休息は制度の外になります。分割の回数を記録していない事業者は、ここで気づかないまま超過している可能性があります。

違反は2つの窓口から来ます

改善基準告示は労働基準法にもとづく告示なので、一次的な監督権限は労働基準監督署にあります。ただし運送業の場合、もう一つ別の監督系統が動きます。

労働基準監督署の系統。臨検監督で違反が見つかると、まず是正勧告(行政指導であって処分ではありません)。改善されず「重大かつ悪質」と判断されると、労働基準法102条にもとづき検察へ書類送検され、119条の罰則(6か月以下の拘禁または30万円以下の罰金)に進みうる形です。

運輸支局の系統。貨物自動車運送事業者としての行政処分です。監査で法令違反が確認されると、文書警告、車両の使用停止、事業停止、許可取消という段階を踏みます。

同じ違反が、労働基準法違反としても貨物自動車運送事業法違反としても扱われるということです。片方が軽い指導で済んだからといって、もう片方も同じとは限りません。

運輸支局側は点数で積み上がります

運輸支局側の処分には、点数制度という仕組みがあります。

車両停止 10日車=1点 累積 50点超 営業所の事業停止 累積 80点超 事業許可の取消 累積期間は原則3年。営業所単位で加算され、車両や運転手を替えてもリセットされない
車両停止10日車=1点。3年間の累積点数で処分の重さが変わる

車両の使用停止処分を受けると、使用停止の日数10日車ごとに1点として計算されます。この点数は営業所単位で付き、運輸局管内で累積されます。累積期間は原則3年です。

処分日前3年間の累積が50点を超えると営業所の事業停止処分、80点を超えるか、その他の悪質な法令違反があると事業許可の取消処分に進みます。1回の違反で車両が数日止まる程度なら軽く見えても、違反を繰り返せば点数は消えずに積み上がっていきます。

つまずきやすい点

  • 「運転時間だけ管理していれば大丈夫」という誤解にご注意ください。待機・荷役の時間を含めて拘束時間になります。運転日報の記録項目を見直す価値があります
  • 休息期間の分割は、記録がないと後から証明できません。何回分割したかを月ごとに数えていないと、限度を超えていても気づきません
  • 労基署側の指導で終わっても、運輸支局側の処分は別に進みます。一方が軽かったからと安心しないでください
  • 点数は営業所単位で累積します。車両や運転手を替えても、営業所としての累積点数はリセットされません

関連する手続き

拘束時間の数字そのものと、転職を考える側からの読み方は拘束時間は月284時間までにまとめました。営業所ごとに義務づけられている貨物軽自動車安全管理者の選任については軽貨物の安全管理者を、荷待ち時間の記録義務については荷待ちの記録は、荷主を国交省に勧告させるための証拠になるをご覧ください。日頃の点呼や記録の状況はGマークの評価や巡回指導の評価にも直結します。

参照した一次資料

このページの制度に関する記述は、上の資料を2026-08-02時点で確認して書いています。 確認できなかった項目は本文中でその旨を明記しています。

この手続きの前後