運送業のしごと 手続きと制度を、現場の側から
軽貨物で独立する 一次資料で確認 2026-08-02 更新 2026-08-02

黒ナンバーは届出だけで取れる。つまずくのは運賃料金表

準拠した制度: 令和7年4月施行(改正貨物自動車運送事業法)

要点

  • 軽貨物は許可制ではなく届出制です。審査を待つ期間がありません
  • 運輸支局への届出そのものに手数料はかかりません。実費はナンバープレート代の2,000円前後だけです
  • 書類は4種類。うち運賃料金表だけは様式がなく、自分で中身を作ります
  • 2025年4月から安全管理者の選任などが義務になりました。これから開業する方に猶予はありません

「2,000万円必要」は緑ナンバーの話です

軽貨物の開業を調べていると、資金要件として数百万から2,000万という数字が出てきます。あれは一般貨物自動車運送事業、いわゆる緑ナンバーの許可要件です。制度が違います。

緑ナンバーは許可制で、車両5台以上、営業所、車庫、事業計画に見合う自己資金を求められ、審査にも数ヶ月かかります。軽貨物、正式には貨物軽自動車運送事業のほうは届出制です。要件を満たした書類を窓口に出せば、その場で受理されます。審査がありません。ですから書類さえ揃えば、最短で当日中に黒ナンバーまで進みます。

1 車両・車庫・保険を決める 貨物登録の軽自動車/車庫は営業所に併設か2km以内/事業用の任意保険 2 運輸支局へ4種類を提出 届出書・運賃料金表・連絡書は各2部。控えに受理印をもらう 3 軽自動車検査協会でナンバー交付 受理印のある連絡書が要る。東京都で2,100円 4 安全管理者の選任と届出 講習5時間を先に受ける。これから開業する人に猶予はない
黒ナンバー取得の流れ。窓口は2か所あり、どちらも平日のみ

出す書類は4種類です

提出先は、営業所を置く都道府県の運輸支局(運輸監理部)の輸送部門です。届出書・運賃料金表・連絡書は、提出用と控え用で2部ずつ用意します。

書類部数補足
貨物軽自動車運送事業経営届出書2運輸支局の窓口か国土交通省のサイトで入手
運賃料金設定届出書 + 運賃料金表2料金表の中身は自分で決める
事業用自動車等連絡書2受理印をもらって次の手続きに使う
車検証の写し1完成検査終了証でも可

控えは事業を営んでいる証明として使う場面があり、再発行されません。受理印をもらったら、そのまま失くさないところへ入れておいてください。

詰まるのは運賃料金表です

4種類のうち、届出書と連絡書は書き写す作業に近いものです。車両の情報と住所氏名を埋めれば終わります。

問題は運賃料金表です。様式がありません。距離制にするか時間制にするか、割増をどう設定するか、待機料や高速代をどう扱うかまで、自分で決めて表にします。「黒ナンバー 運賃料金表 見本」という検索が絶えないのは、ここで手が止まる方が多いからです。

実務上は元請けの委託契約で単価が決まっているケースがほとんどですが、その場合でも料金表は自分の名前で作って届け出ます。契約書の添付では代えられません。

組み方は運賃料金表の書き方にまとめました。距離制と時間制、割増、諸料金という構成は決まっているので、枠から埋めていけば形になります。

費用は思ったよりかかりません

届出に手数料はありません。実費として発生するのは、軽自動車検査協会でナンバープレートを交付してもらうときの費用で、東京都で2,100円です。地域によって多少前後します。

つまり手続きだけなら、3,000円あればお釣りが来ます。

開業費用として50万から200万という数字がよく出てきますが、あれは車両代と任意保険と当面の運転資金を足した総額の話で、手続きの費用ではありません。中身を分けて考えたほうが見通しが立ちます。

車庫には距離の条件があります

窓口に行く前に固めておくのは、車両、車庫、任意保険の3つです。

車両は貨物車として登録された軽自動車が要ります。乗用登録のままでは届出が通らないので、構造変更の検査を受けます。中古の軽バンを買うか、リースにするかはここで決まります。

車庫は原則として営業所に併設します。できない場合は、営業所から2キロ以内なら認められます。自宅を営業所にして近所の月極を借りる形が、この2キロに収まるかどうかで段取りが変わります。広さは車両を全部収容できることが条件です。土地は所有でも借入でもかまいませんが、借りるなら賃貸借契約か使用承諾が要ります。都市計画法に違反している土地は使えません。

任意保険は普通の自動車保険とは別枠になります。事業用は保険料が上がるうえ、扱っている保険会社も限られます。開業してから探すと、車はあるのに走れない期間ができてしまいます。しかも任意保険だけでは預かった荷物を守れないので、貨物保険を別に用意することになります。

2025年4月から義務が増えました

改正貨物自動車運送事業法が2025年4月に施行され、軽貨物にも安全管理の義務が入りました。開業の段取りに影響するのは次の点です。

貨物軽自動車安全管理者を選任します。営業所ごとに1人です。一人で開業する場合はご自身を選任します。選任の前に5時間の講習を受ける必要があり、これから届け出る方に猶予期間はありません。講習の予約は、車両や保険と同じタイミングで押さえておいてください。

業務記録を毎日つけて1年間保存します。業務の開始地点、終了地点、従事した距離などです。事故を起こした場合は別途、事故記録を3年間保存します。こちらは開業初日から発生する義務になります。

制度の全体像と期限は軽貨物の安全管理者に整理してあります。既存事業者の期限は2027年3月31日ですが、これから開業する方に猶予はありません。

つまずきやすい点

  • 窓口は平日しか開いていません。運輸支局も軽自動車検査協会も同じで、しかも別の場所にあります。1日で終わらせるつもりなら、午前中に運輸支局へ行ってください
  • 連絡書の受理印がないと次に進めません。運輸支局で受理印をもらった事業用自動車等連絡書を持って、軽自動車検査協会へ移動する順序になります
  • 管轄は住所ではなく営業所の所在地で決まります。自宅を営業所にするなら結果的に同じですが、車庫だけ別の場所に借りる場合は確認しておいてください
  • 郵送や電子での提出の可否は支局によって違います。行く前に管轄支局の輸送部門へ電話で聞いておくと、往復が1回減ります

関連する手続き

開業費用の全体像は開業費用の内訳に、車両選びの条件は軽バンは荷室が0.6㎡ないと貨物登録できないにまとめてあります。開業したあとの流れとしては、税務署への開業届と青色申告承認申請、それから車両を入れ替えるときの増車・減車の届出が続きます。事業が育って車両を5台まで増やすなら、緑ナンバーへの切り替えを検討する段階に入ります。

車を手放すときの手続きは車両を手放すにまとめています。

参照した一次資料

このページの制度に関する記述は、上の資料を2026-08-02時点で確認して書いています。 確認できなかった項目は本文中でその旨を明記しています。

この手続きの前後