軽貨物から緑ナンバーへの切り替えは、車両5台の壁より先に資格者の壁が来る
要点
「車両5台」は最初の壁ではありません
緑ナンバーへの切り替えを検討し始めると、まず「車両を5台揃えられるか」を考えがちです。実際には、車両は買うかリースするかを決めればいずれ揃います。先に詰まるのは、車両の数よりも人と資金のほうです。
先に来る2つの壁
運行管理者の確保。経営者自身が運行管理者になるつもりなら、軽貨物の実務経験はカウントされないため、基礎講習を受けて試験に合格する必要があります。この準備には数か月単位の時間がかかります。資格者を雇う場合も、採用活動の時間が要ります。
資金要件。積み上げ計算で見た通り、車両台数が増えるほど人件費・車両費の総額が上がります。軽貨物1台分の運転資金とは桁が違う自己資金を、申請から許可までの数か月間、維持し続ける必要があります。
車両5台を揃えるより先に、この2つを準備できるかどうかが、切り替えのタイミングを決めます。
収益構造が変わります
軽貨物は、元請けとの業務委託契約で、決まった単価の委託料を受け取る形が多いです。緑ナンバーになると、自社が荷主と直接運送契約を結ぶ立場になりえます。
これは収益性が上がる可能性がある一方で、営業活動・請求管理・与信管理といった、委託契約では発生しなかった業務が新たに発生することを意味します。運転だけでなく、事業運営の負荷そのものが増えます。
切り替えを検討し始めるタイミング
明確な正解はありませんが、判断材料になる状況はいくつかあります。
- 委託先から、車両を増やしてほしいという打診が繰り返し来ています
- 荷主から直接の依頼が来ているものの、緑ナンバーでないと契約できないと言われました
- 軽貨物1台では捌ききれない量の仕事が恒常的にあります
- 運行管理者になれる人材のあてがある、または自分で資格取得の時間を確保できます
逆に、これらのどれにも当てはまらない段階で車両だけ増やしても、運行管理体制が整わないまま許可申請でつまずく可能性が高くなります。
つまずきやすい点
- 車両を先に増やしてから資格者を探すと、時間差で開業が遅れます。資格取得と車両調達は並行して進めてください
- 収益構造の変化を過小評価しないでください。委託料モデルに慣れていると、直接契約の営業・与信管理に戸惑うことがあります
- 資金の維持義務は申請から許可までずっと続きます。車両を先に買って資金を使い切ると、審査中に要件を割り込みます
関連する手続き
具体的な要件は許可要件(営業所・車庫・欠格事由)、資格者の確保は運行管理者・整備管理者の選任、資金の計算は緑ナンバーの資金要件にまとめてあります。
この手続きの前後
- 緑ナンバーの資金要件は「2,000万円」ではなく積み上げ計算
一般貨物自動車運送事業の資金要件は、人件費6か月分・燃料費等2か月分・車両費と保険1年分を積み上げて算出します。1,500万〜3,000万円という幅は、この計算式が事業計画によって変わるために生まれます。
- 車庫が営業所と離れていても、10kmまでなら許可は通る
一般貨物自動車運送事業の許可要件には、営業所・車庫・休憩睡眠施設の距離制限があります。原則10km以内、東京都特別区・横浜市・川崎市は20km以内。欠格事由に該当すると、資金があっても許可されません。
- 軽貨物の運行管理経験は、運行管理者試験の実務要件に数えられない
運行管理者試験の受験資格になる実務経験は、貨物軽自動車運送事業を除いた事業用自動車の運行管理に限られます。軽貨物での経験は資格要件に算入されず、基礎講習を受けるか資格者を雇うことになります。